ページの上へ

  

睡眠時無呼吸症候群の治療なら無呼吸症候群治療センター 【睡眠時無呼吸症候群の治療はこちら

C-PAPやマウスピースを使わずに症状を改善します。骨盤、背骨、頭蓋骨のゆがみを調整して喉や鼻の気道を広げて呼吸を楽にします。無呼吸症候群の治療ならお気軽にご相談ください。

現在の一般的な治療法

»@ダイエット、肥満の解消

肥満する事によって首まわり、喉まわりに余分な脂肪が付き、これが気道を狭くしますから体重を落とすことは症状の改善に有効です。

»Aマウスピース

イメージ画像01 寝ている時だけ口にはめる医療用マウスピースです。これを着ける事によって患者さんの下あごを前に突き出させます。
これによって人工的に 「小さなアゴ」を「大きなアゴ」に変えます。その結果、気道を確保して呼吸を楽にします。

»Bシーパップ療法

イメージ画像02 シーパップ療法とは、鼻シーパップとも呼ばれC-PAP(Nasal,Continuous,Positive, Airway,Pressure)を略したものです。
小型の装置からポンプの力で空気を送り、これをホースと鼻につけたマスクで気道に導き、喉の奥の軟部組織を拡張することで気道が塞がるのを防ぐ方法です。
酸素ではなく普通の空気を送ります。
別名「空気の添え木」と呼ばれています。使用するには適切な圧力を測定するため入院して検査する必要があります。
イメージ画像03 適正な空気圧と顔にフィットしたマスクの選択がなかなかむずかしいようです。
これによって人工的に「小さなアゴ」を「大きなアゴ」に変えます。
その結果、気道を確保して呼吸を楽にします。

・C-PAPとは(詳しく)

経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure)の頭文字をとってC-PAP(シーパップ)と呼ばれています。
無呼吸症の疑いのある患者さんが、自宅で検査器具を使って行う簡易検査でAHI40以上、または一泊入院検査(PSG検査)でAHI20以上で保険治療でのC-PAP治療が適用となります。 AHIとは、低呼吸と無呼吸を合わせた数値の事で5~15までが軽症、15~30までが中等症、30以上が重症と分類します。 C-PAPは、小型のポンプのような機械で鼻に装着したマスクに空気を送りこむことによってある一定の圧力を気道にかける方法です。
睡眠中であっても健康な人であれば、息を吸うと横隔膜が収縮して胸腔がひろがり、胸腔の中が陰圧になります。
この陰圧によって空気が鼻の穴から喉を通り、気管から肺に流れ込みます。 しかし、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者さんはこの陰圧によって、のどのやわらかい組織や舌が内側に引き込まれ、気道が狭くなってしまうのです。
狭くなった気道を空気が通ると、まわりの組織が振動して音が出ます。これがいびきです。気道を完全に塞いでしまうと、無呼吸となってしまいます。
C-PAPを使用すると、その風圧が舌などのやわらかい組織を強制的に押し開いて、喉の中に空気が通るわずかなスペースが確保されます。
すると患者さんはどうにか呼吸をすることが出来るようになります。
C-PAPは病院などでは、無呼吸症の主な治療法となっていますが、欠点が全くないわけではありません。C-PAPを使った事による副作用もあります。

・C-PAPの副作用

@肺活量の低下
 あまり知られていないC-PAPの副作用に、肺活量の低下があります。
当院に無呼吸症の治療に来る患者さんの中で、C-PAPを長期間使用している人の多くが、この肺活量の低下を感じているようです。
健康診断を受けてみたら、肺活量が低くなっていてびっくりしたという話はよく聞かされます。

ではまず、肺がどのようの空気を取り入れているのかを簡単に説明します。
人間の胸のあたりには、肋骨(あばら骨)が片側に12本ずつあります。
肋骨は、背骨から生えており、体の横をぐるりと回って胸の前にある胸骨という骨に連結しており、ちょうど鳥かごのような形になっています。
この肋骨の骨と骨の間には肋間筋という筋肉が内側と外側に付いており、これがそれぞれ収縮することによって肋骨全体が膨らんだり閉じたりします。
又、胃の上にある横隔膜という筋肉でできた膜が上下することで、胸腔の大きさが変化します。
これらの筋肉が動いて肋骨を外側に膨らませることにより、肺の内側が陰圧になり、空気が肺の中に入ります。
息を吐く時は筋肉が逆の動きをして肋骨や横隔膜が収縮して空気を押し出します。
このような動きで人間は息を吸ったり吐いたりしています。これらの動きは、自律神経の働きで自動的に行われています。
C-PAPは、ポンプの力で空気を肺に送り込むのですが、その使用感は強い向かい風の中で息をするような感じになります。
本来は自分の筋肉の力で空気を吸い込むはずが、勝手に空気が入ってくる状態になります。
そしてこの場合、この空気の圧力に逆らわないようにして筋肉の力を抜いた方が、楽に呼吸ができます。
このような事を毎日、毎晩くり返していると肋骨を動かすための筋肉が弱ってきますし、筋肉に命令を送る自律神経の働きも悪くなってきます。
結果として、肺活量が低下するという事になります。

A心血管系への負担
 オートタイプのC−papの場合、過度な空気圧設定を行うとマスクからの漏れに応じて必要以上に圧がかかり、心血管系に負担がかかります。
過度の空気圧負荷により心不全を発症させ、中枢性無呼吸につながる場合もあります。
 
B鼻や口腔の乾燥、うっ血、鼻血
 C-PAP装置は部屋の空気を取り込んでいるため、室内が乾燥していると喉、鼻が乾燥しやすくなります。
これを防ぐには部屋全体を加湿するか、加湿器の機能を持ったC-PAPを使うことですが、加湿器の機能が付いたC-PAPは器具やホ−ス、マスクに着いた水分を毎日十分に乾燥させないとカビが生えてしまい、毎晩カビを吸い込む羽目になります。
この毎日のメンテナンスが結構たいへんな作業です。
うっかりして掃除をさぼっていて ある時、機械の中を調べたらカビだらけで、それを吸っていたのかと思うと気分が悪くなった、という患者さんの話もたまに聞かされます。

C入眠困難
 マスクを装着して寝なければならないため、なかなか寝付けないという方も多いようです。
このとき自分の判断で睡眠薬を飲んでしまう人もいるようですが、これは逆効果です。
なぜなら、睡眠薬は一部のものを除いて、気道や舌の筋肉が弛緩して筋力が低下するため、無呼吸の状態がさらに悪化してしまうからです。

D腰痛
 C-PAP導入の初期によくある副作用といえます。これは、C−papを装着して寝ることに慣れていないため寝返りをしていないことが原因となります。
使用に慣れる事ができれば、この副作用は解消するかもしれません。

F皮膚のかぶれなど
 マスクを長時間装着して睡眠をとるため、マスクをあてている箇所の皮膚がかぶれる 場合があります。
マスクはベルトでしっかりと顔に取付けるのですが、この取り付けが緩いと脇から空気が漏れて気になって眠れず、強く装着するとそれが気になって眠れないという人が少なくないようです。
マスク自体も色々な形や大きさの物がありますが、人間の顔の形の方がやはりバリエーションがあるため、何度マスクを交換しても自分には合わなかったという方も多いようです。
起きると顔の周りに赤くマスクの跡が付いてしまうので時間が経過してマスクの跡が消えてから出掛けるという人も少なくないようです。

G腹部膨満感
 C-PAPから送られる空気を飲み込んでしまうことで、腹部に膨満感をおぼえることが あります。
これは空気圧が合っていないために起こると思われます。
空気圧を弱くすることで改善しますが、弱くすると無呼吸自体が再発してしまうことも多いようで、場合によってはこの副作用は我慢するしかないと医師に言われてしまうようです。

・C-PAP治療の現状

 無呼吸症の患者さんの多くは、日中のひどい眠気や、家族に睡眠中の呼吸が止まってしまっていることを指摘されて心配になって病院に行きます。
そして、簡易検査や一泊入院検査を行って症状が中等度以上と診断されると、C-PAPを処方されます。
空気圧の設定などが患者さんに合っており、又、患者さんがC-PAPを装着しての呼吸に慣れることができれば、効果は期待できますが、機械を体に着けて寝ることのわずらわしさや、強制的に空気が入ってくる感覚にどうしても馴染めずにやめてしまう人も多いようです。

病院では今のところ無呼吸症の患者さんに対して、C-PAP処方するしか方法がないようです。
そしてC-PAPの一番の欠点は、これで無呼吸症が治るわけではなく、一生使い続けるしかないという点です。
C-PAPを嫌がる患者さんに、病院の先生によっては「これを使わないと、10年以内に合併症で死にますよ....」と脅かす場合もあるようです。
この話のもとになっているデータは日本で多くの患者さんを対象にして集めたものではなく、スペインで発表されたデータで、それもどのようにしてデータを集めたのかよくわかっていないという事です。
たとえば無呼吸症の重症の患者さんばかりを多数集めて、その半数にはC-PAPを処方して残りの半分にはワザとC-PAPを使わせないで、10年経過を観察し、C-PAPを使わない人たちが明らかに無呼吸症が原因の糖尿病や心疾患などで、バタバタ死んでゆくのを見守る、というような実験をすれば正確なデータが取れるでしょうが、そんな実験に参加する人がいるとは思えません。

「C-PAPを使わないと、10年以内に...。」というのは、C-PAPを処方する以外治療法がない病院側の脅し文句なのかもしれません。

ナステントについて

»ナステントとは

比較的、最近開発された睡眠時無呼吸症用の医療器具で、「ナステント」と呼ばれるものがあります。
これは、軟らかいシリコンゴムで作られた、長さ120o〜145o位のチューブを患者さんが自分で鼻の中に押し込んで気道を確保しようというものです。
その患者さんの体格や、顔の大きさなどにより6種類くらいの長さがあり、その中から選ぶようになっています。
使い方は簡単で、患者さんが寝る前に自分で鼻の中に押し込んでそのまま口蓋垂(のどちんこ)のあたりまで挿入します。こうすることによって気道を確保して、睡眠時無呼吸を克服しようというものです。

もともと開発のコンセプトは意識を失った人の気道を確保するために行う気管挿管が元になっているそうです。
また、この製品を開発した会社の社長さんがイビキと無呼吸の症状がひどく、初めはC―PAPを使っていたが、出張が多くてC-PAPを持ち歩くのが不便なため、何か他に方法はないかと考えて、手術用のカテーテルチューブの原理を応用して7年にわたる研究の結果、製品化されたそうです。
開発に7年もかけて絶対に信頼できるレベルに到達して初めて製品化する辺りはさすが物作りの国、メイドインジャパンという感じですね。
特許も取得して欧米で販売する予定もあるそうです。

»実際に使った患者さんの感想

私自身は、残念ながら無呼吸症ではないのでC―PAPもマウスピースもこのナステントも使ったことがありません。
しかし、無呼吸症の治療に来た多くの患者さんの中で、このナステントを使ってみたという方が過去に3人ほどいらしたので、たった3人ですが感想をまとめてみました。

・使用感

 まず、鼻の奥までチューブを入れるのが大変辛い作業で、涙目になるそうです。
又、当然のことながら違和感、異物感が強く、このまま寝れるとはとても思えないという話でした。
製品の使用説明書によれば、ナステントを装着したまま食事も出来るという事ですが、違和感がありすぎてとてもそんな気になれないそうです。
又、女性の患者さんの意見ですが、口を開いて鏡で見ると喉の奥にチューブが2本ニョキっと生えていて、それが気持ち悪いそうです。
又、ストッパーが鼻の穴の前に来るので、このナステントを装着した姿はとても人に見せられない、見られたくないと言っていました。

・効果

 3人のうち、2人がとても辛くてやっていられないという事ですぐに外してしまったようですが、1人だけこのナステントを装着して寝てみた人がいました。
無呼吸に対して効果を尋ねたところ、あまり変化がなかったそうです。
この患者さんはスマホの睡眠アプリを使って、毎晩データを取っているのですが、ナステントを使用しても睡眠中の呼吸停止の回数はほとんど変わらなかったそうです。
ただし、その患者さんもたった一晩使っただけなので何とも言えません。

・費用

 ナステントは使い捨ての製品のため、1か月で2万円くらいの費用がかかるようです。
そして、これで症状が治るというものではありませんので、一生使い続けるという点は、C-PAPと同じです。

・考察

 ナステントの使用説明には『※一部、舌が落ち込むことが原因で気道が狭くなる、又は閉塞する場合は、ナステントは効果がない、又は効果が低いと考えられています。』と、あります。
無呼吸症の疑いのある患者さんが、一泊入院検査を受けた場合、検査結果の数値によって、軽症、中等症、重症と診断されますが、中等症の患者さんにはマウスピースが処方されます。
マウスピースを装着することによって、下顎を前方に突き出した状態になり、舌根部が喉の奥に落ち込んでもわずかに空気が通るスペースを確保することが出来ます。
つまり無呼吸症の場合、中等症の患者さんで舌根部の落ち込みが問題になるわけですから、ナステントは無呼吸症に関しては中等症より軽い軽症の人にしか効果がないのではないかと考えられます。

では、舌根部が落ち込んでも良いようにもっとチューブを長くしたらどうか?恐らく、こうすると喉の奥を刺激して嘔吐反射、つまり「オエエ〜ッ!」と吐いてしまう事になると思われます。
又、挿入する際の異物感ですが、鼻の奥までスムーズに入れるためにはある程度の固さが必要になると思います。
固くないと潰れてしまって気道を確保することが出来なくなります。そして固ければそれだけ異物感が強くなります。つまり、相反する条件をどこで妥協するかという事になります。

このナステントという製品は舌根部が落ち込んで気道を閉塞するタイプの中等度以上の無呼吸症にはあまり効果が期待できず、装用感も慣れるまではかなり辛いという事になると、睡眠時無呼吸症候群の治療用としてはなかなか難しいものがあるような気がします。

無呼吸症候群に効果がある(?)とされるサプリメント

無呼吸症候群に効果があると一般的に言われて販売されているものには次のようなものがあるようです。

・リンゴ酸マグネシウム
・コエンザイムQ10
・ギャバ
・イミダペプチド

では、それぞれどんなものなのか見てゆきましょう

・リンゴ酸マグネシウム

まず、リンゴ酸とはその名の通りリンゴから発見された酸で、オキシコハク酸とも言うようです。
リンゴ酸自体は爽快感のある酸味を持っているため、食品や飲料の酸味料として使われます。
一方、マグネシウムは、豆腐の固める際のにがりとして使われたりする金属で、ゴマやアーモンドなどの食品に多く含まれています。
そして、リンゴ酸マグネシウムとなると、身体の代謝機能を向上させたり、筋肉痛の原因物質である乳酸を分解する疲労回復などの効果があるようです。

・コエンザイムQ10

なんとなく聞いたことのある名前ですが、人の細胞の中にある、ミトコンドリアというエネルギーを作り出す部分に、このコエンザイムQ10が多く存在しています。
そこでこのコエンザイムQ10は、エネルギーを作り出す助けをしています。
このコエンザイムQ10は、もともとは心臓の薬として利用されたのが始まりでした。
エネルギーが不足したことによって起きる動悸、息切れを抑える薬として使われていました。現在では、コエンザイムQ10に高い抗酸化作用があることがわかり、美容の分野でも多く使われています。
それは一言でいうと老化防止、アンチエイジングです。シミやシワや肌のたるみなどは、酸化がひとつの大きな原因とされています。コエンザイムQには酸化を抑える働きがあるので、酸化⇒老化が進行するのを抑えてくれます。
無呼吸症の患者さんも、活性酸素が発生して体中を痛めつけるので、これを抑えるのに有効かもしれません。
ちなみに、このコエンザイムQ10という名前の由来は発見者の名前ではなく、「コ」と「エンザイム」と「Q10」という3つの言葉をつなげて作った名前です。
まず、「エンザイム(Enzyme)」とは「酵素」を意味します。酵素とは人間が食事で得た栄養を消化、吸収したり、不要なものを排出したりするいわゆるエネルギーの代謝に深くかかわり、これがスムーズに行くように手助けをしている物質です。

「コ」は、協調などの意味を持つ言葉「CО」の意味です。「協力」という言葉は英語で「Cooperation」ですが、それと同じですね。
「コ」と「エンザイム」で、「酵素を助けるもの」という意味を持ち「補酵素」という言葉になります。
「Q10」は、「個数」を示す「Quantity」が10個あるという意味です。何が10個あるかというと、炭化水素(イソプレン/isoprene)という物質です。
つまり、「コエンザイムQ10」とは、10個の炭化水素で構成された補酵素という意味です。ちなみに、炭化水素とは、炭化原子と水素原子だけで出来た化合物の総称で、数多くの種類があります。

・ギャバ(GABA)

ギャバとは、(Gamma Amino, Butyric,Acid)の略で、植物や動物や人間の体内にも広く存在するアミノ酸のひとつです。
アミノ酸といっても、たんぱく質の原料になるものとは異なり、ギャバは『抑制性の神経伝達物質』として中枢神経(脳、脊髄)などで働いています。興奮を沈めたり、リラックスさせるのに効果があるようです。
そのためトップアスリートのストレス対策に用いられたりしていますが、現在ではGABAが入ったチョコレートなどのギャバ含有食品も多く販売されており、一般の人にもストレスの軽減に役立っています。
リラックス効果があるので、深い睡眠の得るのに効果があると思われます。

・イミダペプチド

人間を含めた動物の骨格筋に広く存在している物質。
特にマグロやカツオ、イルカ、クジラなどの赤色肉に多く含有されているようです。
このイミダペプチドには、抗疲労効果があることがわかっていて、経口摂取で疲労予防だけでなく、疲労回復力を高める効果もあることが知られています。
人間の場合は、脳細胞や筋肉などの消耗の激しい部位にこのイミダペプチドが多く存在しているようです。

さて、ここまで読んでいただいて、お気づきだと思いますが、『無呼吸症候群に効果のあるサプリメント』として、ネット上で紹介されているものはどうやら無呼吸そのものに効果があるわけではなく、無呼吸症候群の結果として出てくる症状の緩和を目的としたもののようです。
『無呼吸症候群に効果のあるサプリメント』と検索すると、他にもいろいろと出ていますが、説明文を読んでいると、初めのうちは無呼吸症そのものの解説ですが、それがサプリメントの話になるといつの間にか不眠や快眠の話にすり変わってしまっています。
無呼吸症の患者さんが求めているのは、寝た時に必要以上に緩んで気道を塞いでしまう舌根部を引き締めて緩んでこないようにする、ピンポイントで効くサプリメントだと思いますが、残念ながら今のところそのようなものはないようです。
よく言われている言葉で『効果がないからサプリメントなのだ。効果が本当にあればそれは薬品になる。』というものがありますが、無呼吸症の場合もそれが当てはまるようです。

ベストセラー「スタンフォード式、最高の睡眠」には、何が書いてあるか?

2017年に「スタンフォード式、最高の睡眠」という本が出版されてベストセラーになりました。
近所の本屋さんで大量に平積みされているのを見て私も購入して読んでみました。この本は話題になり、その内容がNHKのドキュメンタリーとしても放送されました。
睡眠時無呼吸症候群の治療とはちょっと外れますが、この本にどんなことが書いてあるのか紹介したいと思います。
しかし、本書の文章をそのまま引用することは著作権侵害になりますので、本を読んだ人間がその内容を他人に伝える読後感想くらいに考えて頂ければ誤解がないかと思います。

まず、スタンフォードというのは、アメリカ、カルフォルニア州のスタンフォードという場所に本部を置く、私立大学の事で、正式名所はリーランド・スタンフォード・ジュニア大学というそうです。
この大学は米国の大学の中で、一番早く睡眠医学に注目した施設と言われています。
睡眠医学の歴史はまだまだ新しいもので、1953年にレム睡眠が発見されたころからスタートしたようで、それまでは「ただの休息」と考えられていた睡眠に病気の原因や、治療の可能性を求めて色々な研究が始まったとされています。

この本が、話題になった理由は、一般に「睡眠不足」と表現される体調が優れない状態を「睡眠不債」という恐ろしい言葉で表現したことです。
この「睡眠不債」は、借金と同じように返済が滞ると次第に首が回らない状態になり、脳も体も思うようにならない、「睡眠の自己破産」を引き起こします。
「睡眠不債」は、借金と同じで利息が付くため、気が付かないうちに脳と体にダメージを与えてしまうようです。
そして本書によれば、この「睡眠不債」を返済するのは容易なことではなく、ただ単純に睡眠時間を少し増やすぐらいでは完済できず、睡眠の質を向上させることが大切だと示しています。

たとえ睡眠時間が短くても体の疲れを取って翌日のパフォーマンスを上げるには、睡眠の質を向上させることが大切で、この睡眠の質は眠り始めの90分で決まるとされています。
本書では、この90分を「黄金の90分」と呼んでいます。
つまり、この90分の質が良ければ残りの睡眠も比例して良質になり、最高の睡眠がとれるそうです。
逆にこの90分の質が悪ければその夜の睡眠は悲惨なものになると警告しています。

では、どうすれば90分の最高の眠りを手に入れられるのかという話が展開されます。この「黄金の90分」を手に入れる鍵は、「体温」と「脳のスイッチ」だとされています。
つまり・・・

・深部体温(体の中の深い部分の温度)と皮膚体温(体の表面の温度)の差を小さくすると眠りに入りやすい。

・脳の興奮を抑えてやると眠りに入りやすい


この2つが最高の眠りを得るための必要不可欠な条件という事です。

そしてこの最初の90分の質の良い睡眠が得られたことによりメリットとして次の3つを挙げています。

1.成長ホルンモンは初めの90分で多く分泌されることがわかっている。成人の場合は、成長ホルモンは新陳代謝の促進や、アンチエイジングの役割も果たすと考えられている。又、傷の修復にも役立っている。

2.脳のコンディションが良くなる。

3.自律神経のバランスが整う。


そして無呼吸症の患者さんは、重症の人の場合だと眠りに入った直後から1時間に30回以上、首を絞められているのと同じことなので、そのままの状態では「黄金の90分」の眠りが得られることはないと書かれています。
ではどうやってこの「黄金の90分」を手に入れるか?答えはとてもシンプルで、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きること。
できれば23時位までに寝て、6時間は必要だそうです。
寝る時間を決めて、これを固定することが大切だという事です。

※本書にも書いてありますが、睡眠について、全く不満がないという人は稀で、大多数の人が睡眠について何らかの不満を持っているとされています。
私自身は、無呼吸症ではありませんが、睡眠に対しての不満は持っています。
それは何か心配事や気になる事、嫌な事があったりすると眠れなくなってしまう事です。
いくら考えても仕方ない事を、繰り返し、繰り返し考えて脳が興奮してしまうのかほとんど眠れなかったり、全く眠れなかったりします。
当然の事ながら、翌日のコンディションは最悪で厳しい戦いを強いられることになります。
ところが人によっては心配事や嫌な事があっても「考えても仕方ない、寝よう!」と頭のスイッチを上手に切り替えて平気で寝てしまう人もいて、こういう人は、いったいどういう精神構造をしているのだろう、どうやったらそうなれるのだろうと昔から思っていたので、この「スタンフォード式、最高の睡眠」に何か答えがあるのではないかと期待しながら読み進めました。

◯子供のようにすぐ眠れるようになる2つのスイッチ

「黄金の90分」を得るためには、スムーズに眠りに入ることも大切で、そのためには2つのスイッチを切り替える必要があります。
それが「体温」と「脳」です。

・「体温」について。

体温には、皮膚表面の体温と、体内の内臓などの深部体温の2つがあります。
覚醒している時は、深部体温の方が2℃くらい高いのですが、入眠前は手足が温かくなり、皮膚温が上がって熱を放散して深部体温を下げます。
この時、皮膚体温と深部体温の温度差は、2℃以下に縮まっています。
スムーズな入眠には、深部体温と皮膚温度の差が縮まっていることが大切な鍵となるようです。
つまり、「深部体温を下げて皮膚温を上げること」が睡眠の一つ目のスイッチを入れることになると本書は説明しています。

人間の体温は、ホメオスタシス(恒常性)で、1日中、ほぼ一定に保たれているが、それでもサーカディアンリズム(24時間前後で一周する固有の体内時計、概日リズムとも呼ばれている)の影響で、1日のうち0.7℃ぐらいの変化がある。
そのため、日中は高く、夜は低くなるようです。

これを利用した有効な方法としては、寝ようと思う時間の90分前には入浴を済ませることです。
一度上がった深部体温が下がるのが90分後。
その後さらに深部体温が下がって皮膚温との差が縮まってスムーズに入眠できるという事です。
また、ふつうのお湯に比べて温泉水(炭酸水やナトリウム泉)のほうが、深部体温が大きく上がり、その後大きく下がるので、最強の90分のノンレム睡眠が現れるとされています。
又、普通の入浴は、就寝前の90分が有効ですが、「足湯」は足の血行を良くして熱の放散を促すため入浴と同等の効果があり、足湯ならば寝る直前でも入眠に効果的だとされています。

・「脳」について

脳が興奮しているとなかなか眠れないし、睡眠の質も確保できない。体温が理想的に変動しても、それだけでは眠れない。
動物でも一過性の不眠症は起きるようで、例えば実験用のマウスを新しい柵に入れると眠りにくくなるという実験データもある。
眠りにつく前の脳は、変化やチャレンジを好まず、その意味からするといかに「いつもどうり」を保つかが脳を睡眠モードにするための重要なスイッチであると本書では述べられています。
モノトナス(単調な状態)にすることは眠るための脳のスイッチであり、退屈は睡眠にとっては良いパートナーなのだそうです。
睡眠に入るためには睡眠のルーティーンが大切。つまりいつもと同じ時間にいつもと同じパジャマでいつもと同じ室温、照明で寝る。
脳にいつものコースを進ませるのがスムーズな入眠のためには大切なようです。

さて、この脳のスイッチに関しては私自身、先ほど述べたような理由で興味がありました。
一体どうやったら心配事があったり、悩み事があったりした夜にグッスリ眠りに入れるようになるのだろうと思いながら読み進めましたが、残念ながらそれに対しての明解な答えはありませんでした。
確かにすべてを毎日同じ条件にして脳に覚え込ませて入眠に持ってゆくというやり方は、平常時なら有効でしょう。
しかしたとえば明日、仕事上であるいは人生の上で運命を左右するような出来事がある場合に、極度に緊張した脳を入眠に切り替えるようなスイッチや方法については全く話がありませんでした。
もっともそんな魔法のスイッチを期待するのが間違っているのかもしれません。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

本書では「睡眠」と「覚醒」は、表裏一体であり、良い睡眠のためには良い覚醒が大切であるという事で、話が「最強の覚醒」について展開してゆきます。
つまり、朝起きてから眠るまでの行動習慣が最高の睡眠を作り出し、日中の最高のパフォーマンスを導き出すというものです。
それにしてもこの本には「最高の○○」「最強の○○」「超一流の○○」という言葉がよく出てきます。

〇最強の覚醒のスイッチは「光」と「体温」

睡眠のサイクルには個人差があり、昔からよく言われている90分の倍数で寝るとすっきり目覚めるというのは、かなり大雑把な方法だと今では考えられている。
又、昔はサーカディアンリズムは25時間で、朝起きて光を浴びるとその一時間の誤差が修正されるという説が有力だったが、現在は研究が進んで人間の体内時計の周期は1日が24.2hr、つまり、誤差は12分間であるという事がわかっているそうです。
当然の事ながら光があることによって昼と夜が出来上がっていますが、それだけの事ではなく、光がないと体温や自律神経や脳やホルモンの働きもリズムが崩れて調子が悪くなってしまう事がわかっています。
目が醒めてベッドから出たら天気にかかわらず、朝の光を浴びることは良い覚醒のために大切な、又、極めて有効な手段であると述べられています。

体温については、眠りに入る時とは逆の考え方で、「皮膚表面の温度と深部体温の差を大きくすると覚醒が促進される」ようです。
例えば、朝は冷たい床の上を裸足で歩くとか、さらに深部体温と皮膚温度の差を少しでも広げるために冷たい水で手を洗う事も脳に刺激を与えることになりとても有効なようです。
その他の覚醒のために有効な手段として紹介されているのは、朝食をしっかり噛んで食べる。(しっかり噛むことによって脳に刺激が伝わって目が醒める)とか、朝のシャワーがおススメだとか、朝の軽いジョギングは有効だが、やり過ぎて体温が上がり過ぎると発汗による熱の放散が起きて、そのあと逆に体温が下がって眠気を誘発する、などの説明です。

そして本書では、このような「黄金の90分」や「超究極の覚醒戦略」を得るための努力を行っても、それでも襲ってくる日中の眠気に対するカウンターテクニックについても述べています。
例えば・・・


  • 会議の時に眠くなる
  • →
  • 会話は覚醒のための強力なスイッチになるので、積極的に発言すれば眠気は感じないですむ。

  • ガムを噛む
  • →
  • 噛むことによって脳が刺激されて覚醒する。

  • コーヒーを飲む
  • →
  • コーヒーに限らず、温かいものを飲むと多少は体温が上がって覚醒度が上がる 
などといった方法が紹介されています。
もちろん、これらについて科学的な説明やマウスを使った実験の結果なども記載されているのですが、これらの「日中の眠気」対策は誰でも知っているもので、特に目新しい物はないようです。

『スタンフォード式、最高の睡眠』では無呼吸症についても記述しています。
それによると、無呼吸症の重症の人は、1〜2分に1回、10秒〜20秒も首を絞められ続けた状態で眠っているのと同じなので起きた時に寝た気がしないのも当然だといっています。
そして、無呼吸症が引き起こすさまざまなトラブルについて。

・日中にマイクロリープ(ごく短い時間、意識が飛んだように眠る)が頻繁に起きるようになる。

・肥満や高血圧、糖尿病などのさまざまな生活習慣病になる。

・血液が粘着質になり、心筋梗塞や脳梗塞が起きやすくなる。

・休息が出来ないため、ホルモンや免疫、自律神経が正常に働かない

・重症の人の場合、放置すると約4割が8年以内に死亡する。

などといったことが書かれています。
この最後の項目である“8年以内に死亡”については、いったいどのような実験をしてどのような統計的数値から導き出されたものかは、一切説明がありません。
もちろん私自身はこんな話はでたらめで、C-PAPをずっと使わせるための脅し文句だと思っています。
この本の著者は、睡眠障害の一つである、ナルコレプシー(緊張すると突然眠り込んでしまう病気、原因がまだわかっていない)という病気を専門に研究をしている人で、どうやら無呼吸症については、一般的に言われていることをそのまま記述したようです。
そして無呼吸症の人は、C-PAPを使いさえすれば問題は解決するという説明にとどまっています。
C-PAPを一生使い続けなければいけない不便さやC-PAPがどうしても合わずに逆に気になって眠れなくなってしまう人の苦しみなどについては当然の事ながら触れられていません。
マウスピースについては全く記述がなく、合わないマウスピースを使った事で顎関節症になってしまう患者さんについても触れられていません。
一泊入院検査の結果、重症と判定された患者さんのおよそ半数が日中の眠気を全く感じないという不思議な事実がありますが、これについても何も触れられていません。
まあ、無呼吸症候群について書いた本ではないので仕方ないのかもしれません。

本書は確かに睡眠について深く掘り下げて、科学的な実験のデータを基にした快眠のための方法を解説していますが、実行するのはやはりかなりの根気とその他様々な状況が関係してくるので、理屈としては理解出来ても、日々実行するとなるとなかなか難しいと思いました。

この本には記載されていなかったのですが、私が気に入っている眠りについての言葉があります。
ドイツの哲学者、アルトウル・ショーペンハウアーの言葉です。
「生きているものの命は、死から一時的に前借りしているに過ぎない。いずれ返す時が来る。人が毎晩眠るのは借りたものの利息を支払っているのだ。」

なるほど、「睡眠不足」が「睡眠不債」であるとする本書の主旨と一致している気がします。